近年は日本を飛び出し、海外で生活を送りながらフリーランスになる働き方が注目を集めています。その背景にはリモートワークの普及があるでしょうが、異国の地で時間や規則に縛られることなくビジネスを行うスタイルは、あらゆる世代の憧れの姿と言えます。
しかし、何の後ろ盾もなく単身で海外に乗り込んでも、まともな生活が送れる保証はありません。企業という組織の後ろ盾がない状態では、案件を1つ獲得するだけでも苦労の連続でしょう。
そこで本記事では、海外で活躍することを夢見るフリーランスに向けて、海外移住に向いている職業や、フリーランスの海外移住のメリットなど、様々な情報を解説していきます。
海外移住向きのフリーランス職業7選

働く場所や時間を選ばないフリーランスですが、どのような職業でも海外移住ができるわけではありません。
例えば別の国で生活をしているクライアントとオンラインではなく、対面式で会議や打ち合わせを行う必要がある職業ですと、移動時間や費用が足枷となり物理的に無理があるといえます。
ブラジルに移住後、月に数回は日本の顧客に会いに行くと考えれば、その難しさは容易に想像できるでしょう。
ここでは、そんな海外移住に向いている職業を厳選してご紹介していきます。
通訳・翻訳
通訳や翻訳家は、海外フリーランスの定番と言えるでしょう。
現地を訪れた観光客を相手にツアーガイドのような役割をしたり、外国語で書かれた文章を相手の言語に翻訳する仕事は、いつの世も重要が高いです。
敢えて現地を訪れた日本人をビジネスターゲットにすることも面白いです。右も左も分からない同郷の人間を助けながら報酬を得ることは、やりがいと満足感の両方が得られるでしょう。
デザイナー
自分のセンス一本で勝負ができるデザイナーも、海外でのフリーランス活動に向いているといえます。
日本で実績を積んでから海外に移住することが理想的ですが、全くの無名でも問題はありません。ゼロから有名デザイナーへと飛躍するサクセスストーリーを体験できることも人生の醍醐味です。
また、近年では女性を中心にWebデザイナーもフリーランスの職種としては人気です。商品のグラフィックデザインや、Webサイトのページデザインは女性の得意とする分野でしょう。
コスメなどは女性目線の「かわいらしさ」が求められることから、男性ではなく女性のデザイナーが起用される傾向にあります。
日本企業のコスメやキャラクターグッズのデザインは、外国人からも高い人気を誇っています。そのため、海外で活動するフリーランスの日本人Webデザイナーにも一定の需要が見込まると思われます。
フリーランスという枠組みからは外れますが、デザイナーとしての評価が高ければ有名企業やブランドから声が掛かり、そのまま就職するケースも少なくありません。
イラストレーター
画力が全てのイラストレーターも、海外でのフリーランス向きの職業だと言えます。
クライアントが望む絵を忠実に再現する能力が求められますが、自分の世界観(才能)を前面に出した作品でも、クライアントに認められれば大きなビジネスチャンスとなるでしょう。
近年はSNSを用いて自分の作品を発表し、興味を惹かれたクライアントから仕事を依頼されるという流れも確立されています。クラウドソーシングサイトも利用することも効果的なアピール方法です。
理想的なのは、海外からの収入があることです。海外から仕事を受注しているイラストレーターであれば、移住後も継続して案件を獲得できる可能性が高いので最低限の生活は保障されるでしょう。
ITエンジニア・プログラマー
IT関連の人材不足は世界共通です。最先端の技術を習得していれば、どの国に住んでいても仕事に困ることがないでしょう。
近年は、アプリ開発やWebサイト制作を行うフリーランスエンジニアが増えており、経験と技術を買われれば大手企業から仕事を発注されるケースも珍しくはありません。
フリーランスのITエンジニアはリモートワークで仕事を行うことができるので、勤務先への出社の必要がありません。つまり、インターネット回線を通じて世界中のクライアントとつながれるのです。
報酬単価は提供できるスキルに依存しますが、新たなスキルを身に付けることで日本よりも遥かに高額な報酬を得られます。それこそ、年収で1,000万円以上を実現することだって可能となります。
Webライター・編集・校正
物書きの仕事もリモートワークが可能ですので、海外フリーランス向きだと言えるでしょう。
物書きと言っても小説家などではなく、ここ数年で人気を確立したWebライターがおすすめの職業です。
Webライターとは、インターネットで検索されたキーワードに沿って、Webメディアのページに記載する文章を執筆する仕事です。パソコンとインターネットがあればどこでも仕事ができます。
特別なスキルは必要ありませんが、読者が知りたい情報を分かりやすく解説する能力が求められます。会社員の副業や、家事や育児の隙間時間を有効活用したい主婦から人気があります。
フリーランスWebライターの働き方は、大きく分けて2種類あります。
- 企業などのクライアントから案件を獲得する
- ブログを開設してアフィリエイト収入を得る
企業から仕事を受ける場合は、1文字〇円や、1ページあたり〇円という形で報酬を得ます。稀に時給制を提示してくるクライアントも存在しますが、自分の望む形を選ぶと良いでしょう。
報酬に関しては、経験や実績を積むことでクライアントとの交渉が可能になります。ベテランライターの中には、文字単価3~5円などで仕事を受けられます。
仮に文字単価5円で5,000文字の執筆依頼を受けたなら、その報酬は25,000円にもなるのでかなりの高額報酬と言えるでしょう。
ブログでアフィリエイト収入を得ることは、些かギャンブル要素が強くなります。日本でもブログ収入で生計を立てている方はいますが、個人で行う場合は知名度や専門性が求められます。
芸能人やインフルエンサーのブログなら、ファンの方々の閲覧数で相当な数になりますが、無名の一般人の場合は、ページにアクセスすらしてもらえないケースがあるのです。
そのため、個人がブログで収入を得るにはちょっとしたコツが必要となります。
最初は企業案件を数多くこなしてノウハウを吸収し、ブログで収入を得る方程式が見えてから海外移住することをおすすめします。それほどアフィリエイトとは奥が深いのです。
Webライターのほかにも、編集や校正といった仕事もおすすめです。ディレクターとも呼ばれており、経験を積んだWebライターがステップアップしたイメージでしょう。
業務内容は、ライターの執筆した文章のチェック・修正や、より最新の情報にアップデートしていくリライト、未経験ライターの育成などがメインとなります。
こちらも全てリモートワークで完結するので、海外移住後の生業には打ってつけでしょう。
動画編集
動画配信サイトに自作動画を投稿して動画収入を得るシステムも、今ではすっかり馴染み深いものとなりました。
配信者の中には、演者と編集者(裏方)を両立している方も多いですが、登録者数の多いトップクリエイターほど、撮影や編集といった裏方作業は専門のスタッフが行っているのです。
理由としては、動画としてのクオリティを重視するためです。何のスキルも持たない素人が編集した動画は、どうしてもどこか陳腐な雰囲気を漂わせてしまいます。
動画の内容が魅力的でも、編集後の動画がお粗末では視聴者を惹きつけられません。
そのため、動画編集の専門的なスキルを持つエンジニアは非常に重宝されます。
もちろんある程度の経験や実績がなければ案件の獲得は難しいかもしれませんが、日本で生活に困らないほど仕事が受注できていれば、海外に移住した後も案件に困ることはないでしょう。
裏方ではなく、自分が演者となって表舞台に立つことも面白いのではないでしょうか。
投資家
最後にご紹介するのは、投資家です。一昔前とはことなり、近年の投資活動はパソコンとインターネットがあれば完結します。
株式であれば市場が開かれる時間は限定されますが、FXであれば国よって市場が開く時間が異なるので、ほぼ24時間取引を行うことが可能となります。
そのため、自分の生活スタイルにあった分野を選ぶことができるのが大きなメリットです。
朝から株式市場で取引を行い、夕刻で作業を終える会社員のようなスタイルも良いですし、昼間は海でサーフィンに明け暮れ、夜からFX投資を開始するようなスタイルも夢があって良いでしょう。
しかし、投資にはリスクがつきものです。
時には身も凍るような大損をする可能性があるので、全ての資産を投資に投入することは避けてください。
フリーランスが海外移住するメリット

海外でフリーランス活動をすることによって、様々なメリットがあります。フリーランスとしてグローバルに活躍することの付加価値について解説をしていきましょう。
憧れの国に住める
まずは基本的なメリットとして、自分が憧れている国で仕事をできます。
世界経済の中心地であるニューヨーク、美しい街並みを誇る花の都パリなど、誰もが一度は住んでみたいと夢見る国があるでしょう。そんな憧れの地で生活をしながら自由に仕事ができることこそ、フリーランスの醍醐味ではないでしょうか。
人生は一度きりです。後悔のないよう生きたいのであれば、夢の海外移住にチャレンジする価値は十分にあると思います。
語学力が向上する
海外移住をすれば、必然的に語学力は向上していくでしょう。なぜなら、現地で新規の顧客を得るためには、その国の言葉で交渉を行う必要があるからです。
フリーランスとして海外移住をした際、引き続き日本の顧客と取引をすることが理想的ですが、多くは現地で新たな顧客を発掘する必要に迫られます。こちらが継続を望んでいても、海外移住をきっかけに取引を終了させる顧客は珍しくないのです。
仕事がなければ報酬を得ることもできないので、早急に顧客獲得を目指して営業活動を開始します。当然ですが、使う言語は日本語ではなく現地の言葉です。ヨーロッパ圏であれば英語が主流となるでしょうが、日常会話すらままならないようでは話になりません。
生きるために必死に語学スキルを伸ばすうちに、自然と顧客とも満足な交渉が行えるレベルにまで上達していくでしょう。人間、必死になれば驚異的な集中力や学習能力を発揮するものです。
最初は通訳を雇うという方法もありますが、いずれは独り立ちできるよう意識して語学の勉強しましょう。通訳を雇うには費用が発生しますし、人をとおして発言することで、自分の考えや希望が誤った形で相手に伝わってしまうリスクがあります。
仕事をしながら語学力が向上していくのは、海外移住するフリーランスにとって大きなメリットとなるでしょう。
コミュニケーション能力が磨かれる
語学力が向上していけば、自然とコミュニケーション能力も磨かれていきます。コミュニケーション能力は、ビジネスでも日常生活でも重要です。人との輪を大きく広げてくれるだけではなく、人生に仲間や恋人など鮮やかな彩りを添えてくれるでしょう。
海外の人間は非常にオープンな傾向にあります。日本人が閉鎖的とは言いませんが、ボディータッチや、挨拶のキスやハグなどは、我々の文化の中で習慣として根付くには些かハードルが高いでしょう。
こういった新しい環境・文化に身を置くことで、人と人との距離感が徐々に狭くなっていき、コミュニケーション能力が向上していきます。言葉に問題がなければ尚のことでしょう。
また、異国の地で生活をするには、多くの方のサポートが必要です。自ら友人や知人を増やす努力をしていけば、仕事だけではなくプライベートも充実したものとなります。そのためには、自分が現地の人間になった気で積極的に異文化交流に身を投じる必要があるのです。
最初のうちはボディータッチに笑顔が引き攣ってもよいですし、ハグで腰が引けても構いません。徐々に磨かれていくコミュニケーション能力で楽しい海外生活を送ってください。ただし、日本に帰国した際は人との距離感に注意をしましょう。郷に入っては郷に従えです。
自立心が鍛えられる
生まれ育った国を離れることに不安を感じることは当然です。慣れない土地、ゼロからの人間関係、幸先が不透明な仕事など、敢えて自分を厳しい環境に追い込むことで、これまでより自立心は大きく鍛え上げられることでしょう。
特に海外移住初期は周囲に頼れる人間がおらず、自分1人で生きていくという意識が強くなります。言葉だけ見れば孤独なように感じますが、良い意味で捉えれば非常に野心的とも言えます。生きるも死ぬも自分次第で、ビジネスで成功を収めれば成果は独り占めです。
こういった強い自立心が、フリーランスという立場で海外移住を成功させるためのコツとも言えます。常に誰かの助けを借りることを前提にしていると、せっかく海外に飛び出しても自分の可能性を広げられません。
自分でやれることは他人任せにせず、どうしても助けが必要な場合のみ頼りましょう。その自立心が人間としての器や価値観を大きく成長させてくれるでしょう。
キャリアパスの選択肢が広がる
将来の目標が明確化されているのであれば、日本企業の海外支社に赴任してキャリアを磨くのと同様に、フリーランスも海外で活躍することでキャリアパスが広がります。
例えば将来は世界的なファッションデザイナーとして名を馳せたいのであれば、有名ブランドの下請けとして活動しながら人脈を築いて独立したり、ひたすらデザインを書いては数々のアワードに応募して賞を獲ることを目指したりと、様々な選択肢を得られるでしょう。
洋服ではなく、靴や鞄などに特化することで1つの分野を極めるのも面白いかもしれません。
「それなら、わざわざ海外に出なくても日本で活動すればよいのでは?」
上記のような疑問を抱く方もいるでしょうが、日本と海外では圧倒的にブランド力が異なります。想像していただきたいのですが、誰もが知っている有名ブランドのほとんどは海外のものです。
最先端のファッションセンスを感じられる環境に身を置くことで感化され、自らのセンスを磨くことにも繋がります。また、海外で活動するほうがクラインアトや著名人の目に留まりやすいという利点もあるでしょう。
今回はファッションを例に解説をしましたが、ほかの分野でもやはり海外で経験を積むことでキャリアパスの選択肢が大きく広がっていきます。安易な表現ですが、日本国内でフリーランスをするよりも、圧倒的に箔が付くことも嬉しいメリットです。
また、日本独自の文化を海外で新規事業として立ち上げるのも面白いでしょう。お箸の専門工房や、ショップなどを手掛けてみると、案外儲かるかもしれません。
報酬面で優遇される
移住先の国や職種にもよりますが、海外でフリーランスをすることで高額な報酬を得られるでしょう。日本よりもフリーランスの地位が確立しているアメリカでは、企業に属するよりもフリーの立場で仕事をしたほうが、圧倒的に儲かるケースがあるのです。
その代表的な職種を挙げるなら、弁護士や税理士、公認会計士などでしょう。非常に専門的な職種であることに加え、海外で活動するための免許が別に必要となりますので、自然と報酬額も高くなります。国際的な弁護士として活躍できれば、年間で数千万円、または億を稼ぐことも十分に可能です。
フリーランスなら自分で報酬額を設定できますので、苦労に見合った金額を請求できるのがメリットでしょう。
国によって高額な報酬が得られる職種は異なりますので、自分の得意分野で勝負できる国を移住先に選ぶことも、フリーランスとして成功するためのポイントだと言えます。
海外移住したフリーランスが案件を獲得するコツ

これまで日本でのみフリーランスとして働いてきた方は、どうすれば海外で案件(仕事)を獲得できるのかイメージが湧かないかもしれません。
実は、どこの企業にも属さない日本人が海外で仕事を受注するには、ちょっとしたコツが必要です。本記事をご覧になっている皆さまだけに、フリーランスとして海外で成功する方法を伝授しましょう。
人脈を使う
些か矛盾しているように感じるかもしれませんが、海外フリーランスほど人間同士の繋がりが重要となります。
人間関係というしがらみを解消したいからフリーランスになったという方も多いでしょうが、ビジネスの幅を広げるのに人脈は不可欠です。
1つのクラインアトの案件を終え、その評価が高ければ依頼を継続してもらうだけではなく、新たな顧客を紹介してもらえる可能性があります。
また、オンラインサロンやコミュニティに参加することで知り合いを増やしていき、人づてにあなたの噂を聞いた方が仕事を依頼してくれるケースもあるのです。
仕事の幅を広げるために、人脈を広げておくことも大切だと覚えておいてください。
SNSを活用する
SNSの活用は、自分のスキルをアピールするためには欠かすことができません。
SNSを使ったアピール方法には、下記のようなものがあります。
- 自分のスキルや得意分野をプロフィールに記載する
- これまでの実績やポートフォリオ載せておく
- 仕事依頼を受けるためにお問い合わせページを作る
- クリエイターであれば新作ができるたびに発信する
SNS最大のメリットは、日本国内だけでなく国外の人間の目に触れられることです。そのため、日本語だけではなく英語でも上記の内容を記載しておくと効果的なアピールとなるでしょう。
徐々にフォロワー数が増えれば自然と人の目に触れる機会も増えていきます。新作を発信するたびにさらなるビジネスチャンスに発展する可能性がありますので、どんどん実践していきましょう。
プラットフォームを利用する
フリーランスにとって、クラウドソーシングのようなプラットフォームは心強い味方となります。
登録しておくだけで興味を持ったクライアントから連絡をもらうことができ、逆に自分からクライアントに連絡をして営業活動を行うことができます。
一連の流れが全てパソコンで完結するのですから、利用しない手はないでしょう。
手数料という形で報酬から中間マージンを引かれてしまうのは痛いところですが、クライアントお付き合いを重ねていくうちに、プラットフォーム外での取引に発展するケースも珍しくありません。
海外でもクラウドソーシングサイトは存在しますので、積極的に活用していきましょう。
フリーランスが海外移住する注意点

フリーランスとして海外で働くことには多くのメリットがありますが、その分注意点も多く存在します。
何の心構えもなく闇雲に世界に羽ばたいても、思わぬトラブルにぶつかって墜落する恐れがあります。そうならないよう、今から解説する注意点を頭に刻み込んでください。
海外移住をする目的を明確にする
まずは自分が何のために海外移住をするのか、その目的をしっかり明確化してください。なぜなら、何の目標もない海外挑戦はほぼ確実に失敗(挫折)するからです。海外で暮らしながら働くことは、そんなに甘いものではありません。
アメリカほどではありませんが、日本でもフリーランスという立場は確立されつつあります。職種によっては企業に属するより、フリーの立場のほうが報酬面でも有利なケースもあります。
つまり日本でも成功する可能性があるのに、なぜわざわざリスクを犯して海外に飛び出す必要があるのか、しっかり考えてほしいのです。
- 海外のセンスや文化を吸収することで成長したいから
- 人脈を世界中に広げたいから
- 日本よりも報酬が高額だから
上記のように、自分が海外でフリーランス活動を行う目的を改めて洗い出してください。夢や目標がハッキリしていれば、どんな困難にも立ち向かえるでしょう。
就労ビザの取得が必要
身一つで海外に移住し、すぐにフリーランスとして活動できると思っているのなら大きな間違いです。海外で仕事をするには、就労ビザの取得が必須となります。
就労ビザとは、渡航目的が就労である場合に必要となるビザのことで、移住先の国が外国人労働者の就労を厳密に管理したり、自国の経済を保護するために用いられます。
例えば安い報酬で仕事を請け負ってくれる低賃金労働者を大量に入国させた場合、自国民の仕事が激減するか可能性があります。企業からすれば人件費削減のために低賃金労働者を積極的に雇用したいところですが、それでは国の経済が破綻する恐れがあるのです。
そういった事態を避けるために、就労ビザを用いて低賃金労働者の就労数に一定の制限をかける方法が用いられています。
就労ビザの種類は国によって異なりますが、参考までに日本で働く外国人労働者の就労ビザを載せておきます。
種類 | 適用される人 |
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外交 |
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公用 |
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教授 | 大学など、高等教育機関の研究員や指導員 |
芸術 | 芸術活動で報酬を得る人 |
宗教 | 外国の宗教団体から布教や宗教活動のために派遣された人 |
報道 | 外国の報道機関との契約で取材を行う人 |
高度専門職1号・2号 | 入国管理局が定める「高度人材ポイント制度」によって認定された人 |
経営・管理 | 企業経営者など経営や管理を行う人 |
法律・会計業務 |
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医療 |
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研究 | 日本国内の機関で研究を行う人 |
教育 | 各種学校で語学教育に従事する人 |
技術・人文・知識・国際業務 |
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企業内転勤 | 外国にある関連会社から日本の会社に派遣される人 |
介護 | 介護福祉士の資格に基づいて日本国内の機関で働く人 |
興行 |
|
技能 |
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特定技能1号・2号 | 14の特定産業分野で働く人など |
技能実習1号・2号・3号 | 技能実習計画に基づき、技能習得を目的とした業務を行う技能実習生 |
日本に移住してくる外国人が、あらゆる分野で能力を発揮できるように細かく分類されています。日本の就労ビザは世界的に見ても内容が手厚いので、取得するためのハードルもそこまで高くはありません。
海外でフリーランスとして働く際は、自分の生業となる職業で就労ビザが取得できるのか事前にチェックをしておきましょう。移住後に自分の職業では就労ビザが取得できとなれば本末転倒です。時間のお金をドブに捨てる事態になりかねません。
生活基盤を整えるのに手間が発生する
フリーランスという立場は自由な反面、全ての手続きを自分で行うという面倒に囚われます。
例えば日本と海外では、社会保障の制度が大きく異なります。日本に住んでいても社会保障の実態を詳しく把握している方は少ないでしょうが、企業勤めであれば会社が全て手続きを行ってくれます。
海外移住をした際は、企業ではなく自ら健康保険への加入手続きを行う必要がありますが、言葉が不自由であれば社会保障の仕組みを理解することすらできません。
税金関係にしても、国が変われば確定申告の制度も変わります。自分で納税方法を調べ、きちんと税金を納めなければ、後々に大きなトラブルに発展する恐れがあるでしょう。
税金関係に不安がある場合は、最初から税理士や会計士に依頼するほうが無難ですが、どうやって請け負ってくれる税理士などを探すかという新たな問題も発生します。
そのほか、下記のような手続きが発生することを覚えておいてください。
- 賃貸契約
- 水道・ガス・電気の契約
- インターネット回線の契約
- 銀行口座の開設
- 家具の購入や搬入
- 電化製品の購入や搬入
上記はあくまでも一例です。実際に海外移住するとなれば、生活基盤を整えるために現地で行う手続きはまだまだあるでしょう。
このようなハードルを飛び越えた先に、夢の海外フリーランス生活が待っているのです。
仕事が保証されているか確認する
フリーランスで海外移住をする前に、現地で案件が獲得できる保証を得ることが理想的です。
海外でのフリーランスは、日本以上に不安定な立場です。無事に就労ビザを発行してもらえたからといって、すぐに仕事を受注できる保証などありません。
「それは日本でも同じでは?」と、疑問を抱く方もいるでしょうが、言語や文化が違うだけで営業活動のハードルは段違いに上がってきます。
自分の能力をクライアントにアピールするためには、これまでの実績やポートフォリオなどを提示し、相手が興味を持つようなプレゼンテーションを行う必要があります。
しかし、言葉が不自由ですと自分のアピールポイントが上手く相手に伝わらず、どれだけ営業活動に精を出しても案件を獲得できないリスクがあるのです。
そうなった場合、単純に生活を稼ぐことができないので、日常生活そのものが破綻します。夢の海外生活が悪夢になり、意気消沈と日本に帰国することになれば様々なダメージを受けることになります。
こういったリスクを回避するには、事前に現地での仕事を獲得しておくか、同業者や海外在住の友人などのツテを使って案件が得られる環境を整えておくと良いでしょう。
貯蓄を十分にしておく
現地での仕事が保証されていても、海外移住前に貯蓄はしっかりしておきましょう。
なぜなら、現地で仕事が軌道に乗る保証はなく、せっかく契約してくれたクライントの期待に応えられなければ、容赦なく取引を打ち切られるからです。
日本の会社員のように、1ヶ月働ければ決められた日にちに給与が振り込まれるわけではなく、獲得した案件の数だけ報酬を得られるフリーランスにとって、契約が取れないことは一大事でしょう。
見知らぬ土地で路頭に迷わないためにも、数ヶ月間は仕事がなくても生活ができる余裕は持っておきたいとろこです。
また、指示通りに業務を遂行しても報酬を支払わなかったり、ある日突然に行方をくらます悪質なクライアントの存在も無視することはできません。
日本でも同様のケースは起こりますが、我々の価値観と外国人のそれとは大きく異なります。こちらがいくら正論をぶつけても、理不尽ともとれる理論で平然と乗り切ろうとするのが海外です。
こういったケースに巻き込まれても最低限の生活が送れるよう、貯蓄は十分にしておいてください。
海外保険に加入しておく
万が一の備えとして、海外保険に加入しておくと予期せぬトラブルに対応できます。
海外保険とは、下記のように海外で発生した損害・危険に対処できる保険のことです。
- 病気が怪我の補償(高額な治療費・救助者費用など)
- 携行品の損害
- 飛行機の遅延
- 賠償責任
本来は海外旅行の際に任意で契約する保険なのですが、海外への長期滞在用に特化した保険も存在します。
海外生活では何が起きるか分かりませんので、こういった備えをしておくと安心でしょう。
現地の人間の多様性に対応する
世界は広く、国ごとに人間の多様性が存在します。日本という島国は単一民族で構成されていることから、やや文化が狭いと言わざるを得ないでしょう。
これまでとは大きく異なる価値観を受け入れるということは簡単ではなく、現地の人間に歩み寄れないことで孤独を感じるケースは珍しくありません。
実際、ホームシックを起こしたり、精神に不調をきたすことで海外生活を断念した日本人は非常に多いのです。
日本とは異なる言語・文化の中で生きていくという覚悟があるのなら、多様性を受け入れる柔軟な思考やマインドが不可欠なります。朱に交われば赤くなると言いますが、慣れてしまえばそれが当たり前となるでしょう。
腰を据えて海外でフリーランス活動を行うのであれば、これまでの価値観をアップデートすることを意識してください。
フリーランスで就労ビザが取りやすい国

海外でフリーランス活動をするには、就労ビザの取得が不可欠です。
しかし、どの国であっても簡単に就労ビザが入手できるわけではありません。アメリカのように、非常に就労ビザの申請が通り難い国もあもあれば、ドイツのように就労ビザの申請書類がやたらと多い国もあります。
働く権利を入手することに時間と労力を割くくらいであれば、これからご紹介する就労ビザが取りやすい国に候補を絞ったほうが効率的かもしれません。
今回は、日本人の移住先として人気の国と、フリーランスという働き方に適した就労ビザをご紹介していきます。ぜひ、参考にしてください。
国名 | 就労ビザの種類 | 取得条件 | 必要書類 | その他注意点 |
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フィリピン | 9G | 特になし |
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就労許可(AWPかAEP)が併せて必要 |
マレーシア |
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オランダ | フリーランスビザ |
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フィリピン
フィリピンは就労ビザの取得条件が特になく、提出書類も必要最低限で済むので非常におすすめの国です。
年間をとおして温暖な気候に包まれ、美しい海が広がるセブ島は世界有数の観光名所にもなっています。
セブ島には、世界中のエンジニアが集うITパークというエリアがあり、フリーランスエンジニアのメッカとしても名を馳せています。
日本で経験を積んだITエンジニアがセブ島でフリーランス活動を行うケースも多く、現地の人間や他国のエンジニアとチームを組んでシステム開発に勤しむことができる環境も人気の1つです。
また、英語が伝わることから語学留学先としても利用されており、物価が安いことも相まって、多くの日本人留学生が英語を学びに訪れています。
親日家も多い国民性は、フリーランス活動を行う日本人としては、非常に安心ができる環境でしょう。
マレーシア
マレーシアの就労ビザを取得するには入国許可証が必要となりますが、それは大きなハードルにはなりません。マレーシアに移住するなら入国許可証は持っていて当たり前なのですから。
必要書類も最低限ですし、職務経験の提示に関しても身構える必要のないレベルですので安心してください。フィリピンと同様に、就労ビザ取得は容易な国と認識して間違いはありません。
東南アジアに位置するマレーシアは、やはり日本人には住みやすい国です。温暖な気候に安い物価、日本人に親切にしてくれる国民性など、フリーランスの拠点にはうってつけでしょう。
オランダ
オランダには、フリーランスビザがあります。その名のとおりオランダでフリーランス活動を行うのに適した就労ビザであり、フィリピンやマレーシアに比べれば提出書類は多くなりますが、順を追って手続きをすればそれほど難しいことではありません。
難を言えば、フリーランスビザを取得するとオランダ以外の国に住むことができない(EU圏内の旅行は自由)ことですが、オランダという国に骨を埋める覚悟があるのであれば問題ないでしょう。
オランダは日本と同じく四季のある国で、英語も通じることから日本人には住みやすい国です。美しい街内はまるで絵本の中に飛び込んだような錯覚を起こし、これまでとはまったく異なる世界で新しい人生を始められます。
フリーランスとして移住先を選ぶポイント

フリーランスとは、非常に自由な雇用形態です。働く時間や日数を自らの裁量で決められ、当然ですが移住する国も選び放題です。
しかし、異国の地で生計を立てるというのは言葉ほど簡単なものではなく、移住先の選択を誤ったことで様々な事情が重なり合った結果、身の破滅を招く恐れだってあります。
この章では、日本人がフリーランスとして海外移住する際の国選びポイントを解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
言葉の壁がない
憧れの国に住みたいという夢を壊すかもしれませんが、海外への移住先は言葉の壁がない国が良いです。我々日本人であれば、英語が通用する国が理想的でしょう。住みたい国が明確化しているのなら、事前の現地の言葉を勉強しておくことをおすすめします。
言語というのは、人間同士のコミュニケーションには欠かすことができません。フリーランスという立場になれば、案件獲得のために自らクライアントにアプローチを掛ける必要があります。交渉の場で言葉が通じなければ、契約を結ぶ段階まで漕ぎつけるのは非常に難しいことが予想できます。
仕事以外でも、住民とのコミュニケーションや、各種手続きに関しても言葉は重要です。意思の疎通ができないあまりに契約で不備が発生したり、友人や知人ができず異国の地で完全に孤立してしまう恐れもあるでしょう。
英語は世界で最も使われている言語ですが、どの国でも通用するというわけではありません。海外移住を検討する際は、自分が言葉で不自由しないか事前にチェックしておいてください。
親日家が多い
異国の地で新しい人生を始めるからこそ、人との繋がり・触れ合いは非常に重要です。国によって日本人に対する印象は様々ですが、親日家の多い国に移住すればあらゆる場面でのサポートが期待できます。
日本と海外では言葉や文化、価値観といったものが根本的に異なります。右も左も分からない状況で親切に手助けをしてくれる人がいれば、現地で生活の基盤を築くハードルもぐっと低くなるでしょう。
逆に、日本人に対して負の感情、あからさまな表現を使えば差別意識を持っているような国に移住してしまうと、穏やかな日常生活を送るのも一苦労です。中には露骨な嫌がらせをされるケースもあるので、精神的な負担が大きくなり、仕事に集中できないという悪循環が生まれます。
新しい土地で仕事とプライベートの両面を充実させるために、可能であれば親日国家への移住が望ましい選択肢だと言えるでしょう。
また、親日感情を持つ国では、日本の文化が広まっていることも多いです。例えばドイツのベルリンには40年以上の歴史を持つ剣道の道場があります。こういった馴染みの文化を身近に感じられることで、心の平穏を保つことができるケースもあります。
過ごしやすい気候
日本には四季がある影響で、我々日本人は暑さにも寒さにも多少の耐性があります。しかし、それには限度があり、極端に暑すぎたり寒すぎたりする環境では、快適な日常生活を送れません。
そのため、海外移住をする際は現地の気候にも注意を払う必要があります。
理想的なのは日本と同じで四季が感じられる国でしょうが、それに固執してしまうと移住先の選択肢を狭めることになりかねません。最低でも、自分が体調を崩すことなく生活を送れる国をリサーチしてください。
おすすめなのは、年間を通じて温暖な気候に包まれた国でしょうか。寒さは人間から活力を奪ってしまいますが、温暖で過ごしやすい気候は逆にパワーを充電できます。
サーフィンやダイビングが好きな方にとっては、仕事と趣味の両方を充実できるので、まさに一石二鳥と言えるでしょう。
インフラが整備されている
フリーランスという職業では、インフラが整備されているか否かが生命線となります。特に、インターネット回線が開通しているかは重要です。
リモートワークがメインとなるフリーランスであれば、ネットが繋がっていなければ話になりません。SNSやクラウドソーシングサイトで顧客を発掘することもできなければ、遠く離れた国にいるクライアントと連絡を取ることすらできないのです。
近年は、会議や打合せだけではなく、成果物の納品などもネットを介して行います。敢えて文明社会から離れた国にチャレンジするのもよいですが、インターネットという世界中に張り巡らされた糸の恩恵なしでは、海外でのフリーランス活動はほぼ不可能だと覚えておいてください。
生活水準が保証されている
普段はあまり実感することがないでしょうが、我々が暮らす日本という国は、世界的に見ても生活水準が非常に高い国です。
- 整備されたインフラ
- 清潔が保たれた街並みや歩道
- 24時間営業の飲食店やコンビニエンスストアなど
- 医療機関の充実度
- サブカルチャーのクオリティ
- 数々の最新のサービス
控え目に言っても、何不自由なく生活ができる環境に整っています。移住先の国にも同等の生活水準を求めると選択肢が狭まってしまいますが、最低限のラインは確保する必要があるでしょう。でなければ、ホームシックや精神状態の不調を招く要因になりかねません。
日常生活が不便だと、自然と仕事のやる気もなくなるものです。せっかくお金を稼いでも、近くに外食できるお店や、買い物をする商業施設がなければ張り合いがないでしょう。
がっつり稼いで、しっかり遊ぶために、移住先の生活水準にも気を配りましょう。
物価が高くない
物価が高い国に移住をしてしまうと、精神的に余裕がなくなるのでおすすめできません。もちろん高額な報酬を稼ぐ自信や保証があるのでしたら別ですが、少なくともフリーランスとしてビジネスが軌道に乗るまでは避けたほうが無難でしょう。
例えばアメリカなどは報酬が高額な反面、物価が非常に高い国です。特に経済の中心地であるニューヨークでは、ホットドック1つ購入するだけで日本の数倍の金額を払うケースがあります。
貧乏暇なしと言いますが、物価が高いあまりにプライベート返上で仕事に打ち込むのは、あまり良い環境とは言えないでしょう。いつか心と体が限界を迎えてしまう可能性も否定できません。
夢を掲げるのは自由ですが、最初は自分の身の丈に合った国を選ぶと良いでしょう。
安全に生活ができる
あまり意識されないポイントなのですが、移住先の治安というのも気に掛ける必要があります。
極端な例を言えば、内戦真っ只中の中東に移住をすることは非常に危険です。そのレベルであれば誰でも理解できるのですが、ひったくりや置き引き、法外な金銭要求が多発している国には不思議と危機感を抱かない方が多いのです。
海外を訪れた日本人観光客がお釣りの金額を誤魔化されたり、タクシーやレストランで法外な金額を要求されたというニュースを見たことはありませんか?
日本人というのは、お金を持っているが気が弱いという印象が強く、一部の外国人からはカモ扱いされています。言葉が通じないことも上手く利用されているのでしょう。
こういった環境ですと、日常生活で何かしらのトラブルに巻き込まれる可能性があります。イタリアなどは、日本人に限らず観光客に対するスリ行為が非常に深刻化しているのです。
事前にそこまでの状況を把握することが難しいかもしれませんが、身を守る術を考えておくことは必要な備えと言えるでしょう。
フリーランスの海外移住で可能性をグローバルに広げよう

時間や場所、就業規則に縛られない自由な働き方であるフリーランス。
日本という安住の地を飛び出し、海外移住という選択肢には無限の可能性が秘められています。報酬やキャリアアップだけではなく、憧れの国で生活ができるという高揚感が、これからの人生を非常に豊かなものにしてくれるでしょう。
その反面、海外移住したフリーランスには多くのリスクが付き纏います。下手をしたら人生が破綻する恐れもありますが、事前に準備と心構えをしておくことでそういったリスクは回避できます。
フリーランスには腕に覚えのある方が多いです。自分の力が世界でどこまで通用するのか試すとともの、その先の可能性をグローバルに広げていきましょう。
年齢は関係ありません。40代でも50代でもチャレンジする価値はあります。海外進出という新たな船出が、きっと良い刺激となってあなたの力に変換されていくでしょう。